五島市福江島の南西約60キロの鳥島を構成する3島が「岩」の名称であるため、市が秋にも「島」の名称に変更の申請をすることが17日、分かった。鳥島は北岩、岩瀬(中岩)、南岩の3島からなり、領海や排他的経済水域(EEZ)の基点となっている。近年、国境離島の領有権や外国船の違法操業による緊張が高まる中、「国境に面した重要な島が岩と名付けられている」と、市民から名称変更を求める声が上がっていた。
国連海洋法条約には、EEZは島を基点とすることを定めている。また、地図に記載されている島の名称は、関係市町村が国土地理院に地名訂正申請書を提出すれば変更できる。
今秋の名称変更は同日の県議会一般質問で、山田博司議員(改革21)の質問に坂越健一企画振興部長が回答し明らかにした。「手続きが円滑に実施されるよう国に働き掛けたい」と支援する考えも示した。
2011年、鳥島近海では中国漁船による違法操業事件が2件相次いで発生。沖縄県・尖閣諸島をめぐり日中の領有権問題がクローズアップされていたこともあり、国境離島を抱える同市には12年、経済団体の代表らでつくる「五島市鳥島等の保全・整備を求める期成会」が発足した。期成会は周辺での操業が監視につながるとして漁業者への燃油代支援や護岸整備などを国、県に求めている。
今年1月には市に島の名称変更を要望。事前の期成会役員会では「いまさら『島にしている』と思われないか」などと、他国の反応を警戒する慎重論もあったが、国境離島の重要性から名称変更の要望を決めた。
期成会の立石光徳会長は「鳥島が領土問題に発展してからでは遅い。早急に何らかの対応が必要で、島の名称変更がその第一歩になることを期待したい」と語った。
同市は今後、周辺漁業者や市民、議会の意見を聞いた上で新しい名称を決め、申請書を提出する方針。同市市長公室は「鳥島はEEZの基点になり、日本にとっても重要な地点。市民からの要望もあり、名称に『島』を入れた方が適切だと考えた」としている。
【編注】立石光徳会長の徳は、ツクリの心の上に一